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2023/public
「 倉 庫 の よ う な別宅」
場所は京都の西ノ京円町。
東西にのびる丸太町通りを北へ一本入った、静かな住宅地にぽかりと取り残された小さな敷地がある。近くに暮らすクライアントが、増えてきた自身の愛用品を収容する倉庫を建築するために買い増した敷地である。
敷地面積はわずか17坪。間口4m奥行14mのうなぎの寝所。ここに倉庫の機能に加え、寝泊まりが可能な住宅設備一式を備えた小さな住宅を建築した。
また小売業を営むクライアントが気ままにワーケーションをしたり、不定期の販売イベントの開催なども想定した多様な空間のあり方を考えた。
主体構造は狭小地での施工性、建築コストなどを考慮し木造で建築することになった。
しかし、間口が狭く一般的な軸組構造では耐力壁により荷物を置くと使い道が限定されるだけでなく、小さな空間を分断し、より閉塞感を生んでしまう。
そこで、1階の居室(+倉庫)と一部2階の一室を包括する切妻屋根で覆い、V字に組んだ門型トラスで支える架構を考えた。方杖がリズミカルに連続する母屋を抜けるとアウトドアキッチンを備えた中庭そして、その奥の離れ(風呂、洗面、トイレを配備)へとつづく。
この空間は3枚の扉により自由に内外を仕切り、また、開放することができる。いずれも防火袖壁又は防火塀により隣地からの延焼を防ぐことで、高い開放性を実現することができた。
コールテン鋼で覆われた入口の防火袖壁は折れ戸を収納する戸袋の役割も果たしている。開放時には壁面と面一になり、販売イベント時には街とシームレスにつながることが出来、閉じれば愛用品に囲まれた自分だけの空間を堪能することが出来る。
素材は、木材、真鍮、適度にひび割れた荒壁、コールテン鋼など経年による変化が現れるものを選んだ。クライアントが歳を重ねるごとに、建物も歳をとる。そんな、お互いの経過を楽しみながら、数年先の”やりたいこと”にも対応できる、そんな様々な可能性を含んだ、倉庫のようなガランドウな住宅ができた。
architecturephotoに掲載されました。
三野貞佳 / アリアナ建築設計事務所による、京都市の「西ノ京の家」。様々な使い方を想定した“うなぎの寝床”に建つ住宅。限られた敷地の有効活用を求め、空間を分断しない“Y字の門型トラス”で支える建築を考案。“三枚の扉”を導入して用途に合わせた繋がり方の調整も可能とする